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2025/05/29 12:23

【種一揆】 第五話 「2,000円台の備蓄米」

日本の米市場は、時代とともに大きく変動してきました。令和7年6月には小泉農林水産大臣のもと、備蓄米が末端価格2,000円台で消費者向けに流通する方針が発表されており、注目を集めています。
今回は、2,000円台の備蓄米の背景について解説します。

備蓄米とは何か? 今回流通するお米の内容

政府が保有する「備蓄米」は、食料安全保障や需給安定のために備蓄されるお米で、毎年約20万トン程度が入れ替えの対象となります。通常、備蓄後5年を目安に処分・売却され、その際に入札を通じて民間へ流通します。
現在、主に流通しているのは24年産米で、23年産が古米となります。今回放出される22年産米、21年産米はそれぞれ、古古米、古古古米に該当します。

コメの相対取引価格

古古米、古古古米の流通価格を考察するにあたっては、「コメの相対取引価格」を確認する必要があります。
「コメの相対取引価格」とは、全国農業協同組合連合会(JA全農)などの出荷団体と卸売業者との間で、主食用米を取引する際の価格のことです。これは、コメの取引価格の代表的な指標の一つで、玄米60kg当たりについて毎月、農林水産省が公表しています。
今回は、農林水産省の「コメの相対取引価格の推移」資料から、年産平均価格で見てみましょう。

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コメの相対取引の年産平均価格

さらに、令和6年産⽶の令和7年4⽉の相対取引価格は、備蓄⽶の取引を含む全銘柄平均で27,102円/60kgとなり、玄米5kgあたりの価格は2,258円となっています。

こうした背景を踏まえると、今回2,000円台で流通する備蓄米は、単に「古い米だから安い」というよりも、価格の安かった年産米を国が保管し、適切に管理した上で市場に戻す仕組みが、いま消費者の手に届く形になっているとも言えます。

特に、令和6年産の米価は近年まれに見る高騰傾向にあり、先述のとおり相対取引価格は、令和3年産米の約2倍にも達しています。この価格差が、今回の2,000円台という末端価格の実現を可能にしています。

一方で、精米梱包・運搬等にかかるコストについては、事業者の努力といった部分も窺えます。人件費の高騰に加え、通常とは異なる急を要する業務となり、事業者側の負担も大きいことでしょう。

備蓄米の味は未知数

今回のように備蓄米が一般の消費者向けに末端販売されるケースは極めて珍しく、「備蓄米の味」がどのようなものであるかについては、まだ未知数な部分が多いのが実情です。備蓄米は低温倉庫で適切に管理されているとはいえ、保管年数が経過しているため、香りや食味の変化は一定程度避けられません。
ただし、炊飯加工やブレンド技術、調理された状態での品質向上は十分に可能であり、「味わうための工夫」が今後のカギとなってくるでしょう。
消費者にとっても、価格だけでなく「どのような形で届けられるのか」「どんな調理方法が合うのか」といった視点で、この備蓄米に向き合うことで、食品ロスの削減や食料安全保障の一端を担う選択にもつながるかもしれません。

おわりに

私たち日本人は、お米の味に敏感で、毎年新米のおいしさに感動している方も多いのではないでしょうか。
安価な備蓄米を購入したけれど、香りや味が気になってしまい、炊飯調理に追加の工夫が必要となって、追加のコスト(時間・調味料など)が必要になる可能性もあると思います。

いちたねでは、備蓄米の取り扱いはございません。
品種によって、在庫が少なくなっているものもございますので、一部数量制限による販売をさせていただいております。
農薬・化学肥料を使用していない、昔ながらのお米なら、有機米に詳しい稀有な米屋のECショップ「いちたね」でお取り寄せできます。

参考文献・出典
農林水産省「コメの相対取引価格の推移」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/keikaku/soukatu/attach/pdf/aitaikakaku-392.pdf
農林水産省「政府備蓄米の買戻し条件付売渡しの入札結果(第3回)の概要について」
https://www.maff.go.jp/j/press/nousan/boeki/250430.html
米の相対取引価格・数量、契約・販売状況、民間在庫の推移等
https://www.maff.go.jp/j/seisan/keikaku/soukatu/aitaikakaku.html